カンカン石(サヌカイト)のこと

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カンカン石(サヌカイト)のこと

公益財団法人喝破道場
五色台焼き窯元
野田大燈

 

瀬戸内海国立公園「五色台」の戦後は中国からの引き揚げ者を受け入れる開拓地でした。

中国で生まれ育った私の両親は敗戦と共に引き揚げて来て、開拓者として五色台に入植したようです。

物心ついた頃には両親が荒れ地を開墾していました。そして小学高学年の頃には私も荒れ地を開墾していました。

重い開墾鍬を振り下ろすと「カチーン」と金属音がして開墾鍬が跳ね返ってくるのです。

五色台の土地にはカンカン石が土地の表面にも大地の中にも転がっているのです。

畑になって植えたサツマイモを素手で掘り上げようとすると鋭いカンカン石の角で手を傷つけてしまいます。

カンカン石は石器時代に矢尻や石包丁として使用されていただけあって鋭いのです。

「どうしてここにはこんな石があるのだろうか」と恨めしく思っていました。

 

仏縁あって三十九才で出家して修行を終え、父が残してくれていた五色台に禅道場を創ることとなりました。

葬儀・法要を行わない自給自足の道場ですので、改めて畑に転がっているカンカン石と向かい合うことになりました。

私に取っては嫌な石ですが、カンカン石は私の生まれる遥か以前から存在するものです。

「この嫌な石を有効活用出来ないものか」と視点を変えると色んなことが解ってきたのです。

世界でも香川県の五色台周辺のみに出土する学名「サヌカイト」は、50年前の東京オリンピック大会で世界に向けての開会宣言時に演奏されるなど、打楽器として高い評価を得ていたのです。

サヌカイトは1,350万年の瀬戸内火山活動によって噴出した特異な溶岩「非顕晶質古銅輝安山岩」で、硬度七と言う硬さから古代ではヤジリや石包丁として用いられたり、妙音を発することから祭礼行事の楽器として使用されていたようです。

このサヌカイトが発する美音の秘密は、石質に大きな結晶(班晶)が極めて少なく、ほとんどがガラス質や非常に細かい結晶の部分(石基)で出来ており、針状の粒子が一定方向に並んでおり、全体が均質であるために叩くと振動が打ち消し合うことなく均等に伝わり、美しい音色を長く響かせることが解明されたそうです。

人の耳に伝わる高周波は2万ヘルスが限界とされていますが、滝の音やイルカの鳴き声は10万ヘルツの高周波音を含み、人間の精神を安定させる効果があることも解っています。

 

サヌカイトの場合はピアノよりも高い音を出すことができ、100万ヘルツまでの高周波音を出すことが可能とされて非常に高い癒し効果があるそうです。

サヌカイト自身が極めて少ないだけに希少価値があります。

また楽器に使用できる良質の原材料は更に少いだけに高価なものとなっており、やがては採り尽くされてしまう心配があります。

現在、日本には100万人以上のウツ患者がいると言われ「癒し」と言う活字が新聞雑誌等に踊っていますように世は正にストレス社会の中にあり、人は無意識に心身の安定を求めています。

この素晴らしい癒し効果をもつサヌカイトを少しでも多くの方に、そして安価で大量に製作できないものかと言う想いから試行錯誤の中で、サヌカイトを微粉末にして陶製の楽器製作に取り組んで世界で初めてサヌカイトの陶製楽器が完成し「サヌカイト陶琴」と命名しました。

 

世界で香川県のみに産するサヌカイトを「癒しの楽器」として、心身に障害のある仲間たちと共に生産に係わることで、障害者自身が癒される陶芸工房になれば、と願っています。

国内のみならず、世界に発信してサヌカイトの持つ妙音で世界平和への貢献ができることを念じております。

 

大燈合掌

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